2018年度卒業
ー 卒業制作の作品紹介をお願いします。
「mould」は、メラミンスポンジの塊に通し穴をあけ、そこに流し込んだ樹脂がスポンジの浸透と重力により成形され、掘り出すことで姿が現れます。
日常生活の中にあふれた均質で最適化された物にただの消費者として接するのではなく、「掘り出す」という原体験的なプロセスを通して使用者自らがその痕跡を「もの」に宿らせることで従来の人と物の関係性を問い直すきっかけとなるようなオブジェクトを目指しました。
ー 卒業制作に関することで、印象に強く残っていることはありますか。
この作品は、大学4年の前期から続けていた素材研究プロジェクトの1つの集大成として制作しようと決め、割と早い段階からコンセプトも固まり、様々な素材を使って形状等の検証に時間を多く費やしました。
また、制作過程自体もプロジェクトにとって非常に重要な軸だったので、より多くの人に共有できるように動画も作成しようと考えました。
作品の特徴として、自分が行う作業は棚やテーブルのざっくりとした輪郭を想像しながらスポンジに穴をあけ、その穴に樹脂を流し込むだけで、残りは浸透と重力で形作られていきます。スポンジを掘り出すまでは、どんな形状が出来上がるのかわかりません。
正確な設計図をイメージして制作するというより、自分と自然が一緒に作り上げていくという感覚に近く、能動的でもあり、受動的でもある制作過程に自分自身作りながらワクワクしていました。
一般的に成形品を考えると、偶発性や不均一性は除外されるべき要素ではありますが、この作品に関しては、回避すべき要素が「無二性」という価値を成形品に与え、そのプロセスにも従来の成形品にはない情緒的な価値が生まれたと思います。
ー 卒業制作に取り組む上でのポイントや、意識など後輩にむけてメッセージをいただけますか。
自分の考えを様々な素材に触れながら自由にアウトプットできるということはとても貴重で尊い経験です。
頭だけで考えるのではなく、とにかく手を動かして、思いつく限りたくさん実験や検証をしてみてください。その過程で、制作の糸口となる発見やとっかかりが見つかるだろうし、疑問と発見を繰り返すことで自分は何が好きで何がしたいのかはっきりしてくるのではないかと思います。
是非、楽しみながら自分らしい制作をしてください。
ー どうもありがとうございました。
2018年度卒業
松下陽亮