2021年度卒
ー 卒業制作の作品紹介をお願いします。
私はこれまで自然をテーマにした作品を中心に作ってきました。そこで、卒業制作でも自分が愛する自然に関わる作品が作りたいと思っていました。しかしただ漠然と好きなものを表現するのではなく、自然という広大なカテゴリの中でもしっかりと「これを伝えたい!」と思えるコンセプトを見つけて大学での制作の集大成にしたいと考えました。そうして考えているうちに、私は樹皮に注目するようになりました。自分が普段、木を日常の景色の一部としてしか見ておらず、実際に目を凝らして一本一本を見つめると本当に魅力的なテクスチャーがあることに初めて気が付きました。5つの種類の樹皮のテクスチャを透明な板状にしたガラスで新たに表現することで、普段は葉や枝の生い茂った、そのボリューム感であまり注目されることのないさまざまな樹皮の魅力をダイレクトに伝えられるのではないかと思い、今回の卒業制作に至りました。
ー 卒業制作に関することで、印象に強く残っていることはありますか。
自然をコンセプトにするときにいつも自分の中で課題になっていたのが、ただの自然物の真似っ子になるのではなく、自分の中の感性を交えた新しい見せ方をしたいという点でした。自然はありのままの姿が当たり前に美しいため、世の中には自然の形をそのまま模したデザインが沢山溢れています。しかしただ模しただけだと、本物を見たときの感動は超えられないと感じました。そこで、一時期シリコンで本物の木から樹皮のテクスチャを型取りすることも考えていましたが、1から油土で自分なりの樹皮の造形を5種類作ることに決めました。ガラスにしたときにガラス特有の屈折から生まれる面白さを利用するような形にしたり、最後の最後まで制作が終わらないかと思いましたが、ひとつずつ丁寧に考えることで、ガラスで自分が樹皮をテーマにした意味をより強いものにすることが出来たと思っています。
ー 卒業制作に取り組む上でのポイントや、意識など後輩にむけてメッセージをいただけますか。
私は、大学3年からコロナウイルスが流行してオンライン授業が取り入れられはじめた当初、家にこもることが多くなり、それ以降も以前より外出する機会が無意識に減っていました。そして、その時期から自分が表現したいはずの自然をテーマにした作品作りが思うようにいかなくなっていました。
そんなうまくいかない中でとある作品のオンライン講評のときに「ちょっと外に出てみなよ」「遊んでみなよ」と言われたのを強く覚えています。そうしたきっかけがあり何日も様々な自然の豊かな公園や森などを巡って、自分は自然の中でどういったものに興味を惹かれるのか見つめ直すことが出来て、沢山撮った写真達を見返したとき、今まで自分があまり関心がなかったはずの木の樹皮を沢山撮影していることに気付き卒業制作を作ることができました。
私自身もでしたが、卒業制作となるとやはり沢山の事を考える必要があるため煮詰まったり、コロナ禍も相まって心が塞ぎ込んでしまうこともあるかもしれませんが、頭の中だけで難しく思い詰めるのではなく、外に出てみたり実際に作りたいかもと思ったものはどんどん行動に移して目で確かめたりと、想像して不安になるのではなく体感や実感を大切にしながらどんなものを作っていくか柔軟に考えていってほしいなと思います。
制作の最後の方は心身ともにいっぱいいっぱいになるかもしれませんが、皆で支え合いながら悔いのないように大学最後の制作をしてほしいです。頑張ってください!
ー どうもありがとうございました。
2021年度卒
三浦 杏