Department of INDUSTRIAL,INTERIOR and CRAFT design武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科

工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS

2014年 インダストリアルデザイン 度卒業

徳山義介

Gisuke Tokuyama

シチズン時計株式会社 デザイナー

ー 現在のお仕事内容について教えてください。
腕時計のデザイナーをしています。社内では若手と呼ばれる層ですが、これまで様々なモデルを商品化させていただく機会に恵まれました。直近では、「Series8」と呼ばれる機械式腕時計のデザインを担当しています。TVCMが放送される程の期待を背負ったモデルを担当するのは初めてだったので、非常にやりがいがありました。腕時計を作る仕事は、プラモデルを作るのと非常に似ています。サイズが小さい、様々な素材に関する知識が必要、根気がいる、などなど・・。小さい頃からプラモデルを作るのが好きだったので、今でもその時の経験が生きています。地味な作業の連続ですが、そうした積み重ねが高い完成度につながっていきます。
ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか。
「欲しい」と思える製品を作ることです。製品自体が美しいことも重要ですが、人の物欲を喚起させるデザインを意識しています。スクリーン越しに様々なコンテンツが無料で楽しめる時代ですが、実物はお金を払わなければ手を入れることができません。記念日やプレゼント、就職・昇進祝い等など、時計は人生の節目に購入されることが多く、そうしたプロダクトに携わることができるのは幸せです。 もう一つは、トレンドに迎合することを恐れないことです。「普遍的」という言葉に頼りすぎると、知らない間にアイデアの幅を狭めてしまうことがあります。スマホが普及した現代において時計はファッションとしての性格が強い為、陳腐化をあまり気にせず、引き出しを増やすことを心がけています。
ー 工デで学んだことは卒業後にどのように活かされていますか。
当時は古臭いと思っていた、手作業でモデルを作成する経験が今に生きていると思います。今は3Dプリンターがあるのでわざわざスタイロフォームを削って粉まみれになる必要はありませんが、どのような形であれ、立体と素材に触れる経験が重要だと思います。特に腕時計は様々なCMFの集合体なので、在学中に作った様々なモデル制作の経験が今の造形力につながっていると感じます。また、締め切りを守る力も鍛えられました。限られた時間内で最良の作品を作るためにはどうすればよいのか、逆算してスケジュールを組み立てる力は、仕事においても役立っています。
ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うところなどを教えてください。
良いところは、自由度の高さでしょうか。あまり条件の多くない、学生の想像力を試すような課題が多かったと思います。また、特殊な例ですが、私自身は金工→カーデザイン→IDと転科を繰り返し、様々な体験をすることができました。やってみたいことが多くて迷いが生じていた時期ですが、半ば雑談のような進路相談にも先生方には快く乗っていただき、感謝しています。 また、1~2年次の絵画や彫刻等で様々な素材に触れる事ができるのは、視野を広げる上で重要なことです。一方で、あっという間に就活の時期が来てしまい焦ってしまう友達も多くいました。骨太な基礎力を身に着けるためには良いカリキュラムですが、私を含め、学生時代にそれを実感するのは困難かもしれません。デザイナーの形が多様化する中で、学生と大学が柔軟なコミュニケーションをとることが大事になってくると思います。
ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
予備校などに通われている方は、「受験の為の絵」を描く事に戸惑いを感じる方もいるかもしれません。特に工デを目指している場合、平面の絵を描く事よりも、工作等の立体製作が好きな方もいるかもしれません。私もその一人で、絵を描くことに苦手意識がありました。もし、友達が「好き」で絵を描いているのに、私だけ苦しみながら「努力」している・・と感じたとしても、全く問題ないと思います。デザイナーになる過程である程度の絵を描けるスキルは必要ですが、仕事で毎日絵を描くのかというとそうでもないので。淡々と練習し、必要なことだと思って時にドライに割り切る事も大切です。在校生の方は、講評の際に教授陣から様々な意見を頂いて混乱するときもあるでしょう。「A教授はこう言うが、B教授は違う意見・・」といった状況もよくあるかと。そういった際、全ての意見を取り入れずに取捨選択するのもありだと思います。自分の作品なので、自分の選択に責任を持つことが大切です。