Department of INDUSTRIAL,INTERIOR and CRAFT design武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科

工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS

2003年 テキスタイル専攻 度卒業

香月裕子

Katsuki Yuko

Katsuki Connection 代表

ー 現在のお仕事内容について教えてください。
ホテルやオフィス、個人邸などのラグやカーペット、壁紙、テキスタイルのデザインを、お客様のご要望をうか がいながらデザインする仕事をしています。 2017 年に発表したオリジナルブランドでは、日本神話や平安時代の文化から着想を得てデザインしました。 現代の人々の生活は、スマホやネットに束縛されているように感じているため、人が本来持っている感覚を 取り戻し豊かな時間を過ごしてほしいという思いから、現代のプロダクトにも同様の遊び心を取り入れデザ インしました。 今年、私たちにとって身近な存在の「紙」をテーマに、コレクションを発表します。折り紙をモチーフにしたラグを 自由に組み合せるなど、ほかにはない世界に一つだけのクリエイティブな空間を作り出したインテリアです。 こうしたアイテムを生活空間に加えることで、人々の心がもっと自由な創造性に満ちたものになるようにと願ってい ます。
ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか。
クライアントの要望や課題について、丁寧に聞くようにしています。 先程『呼応の間 あなたのクリエーションが開花する旅』についてお伝えしましたが、私自身も常にお客 様や空間と、呼応しながら生み出すことを大切にしています。その空間の歴史や外光の入り方などを調べて、様々な要素を融合させながら最適なデザインを作ること を目指しています。明治記念館のカーペットデザインに関わらせていただいた際も、明治記念館の皆様や空間の声に耳を澄 ませながら、歴史ある空間に息吹を吹き込んでいくように丁寧に作り込んでいきました。このカーペットはそれぞれ、樺茶色や胡桃色など日本古来の8つの色を使用しています。全ての色がミックスされた時に、それぞれの色が引き立て合うように、また空間が調和することを目指しました。私にとって非常に思い出深い仕事となりました。このような機会に恵まれ本当にありがたく思っております。
ー 工デで学んだことは卒業後にどのように活かされていますか。
私は学生時代、表現方法として『織り、染め、フェルト、コラージュ、リピートデザイン、ファイバーアート』など、 様々なことを実験的に行なっていました。色々な表現を模索したことで、今の仕事につながるきっかけになっていると感じています。課題で出たドローイングも、課題終了後もほぼ毎日、日記のように制作していました。今振り返ると、ベストな構成を決断する目を鍛えられたと感じています。 インテリアファブリックの課題も思い出深いです。 田中教授に、自分が染めたい柄に合わせて生地を織ったら良いとアドバイスいただき、インテリアファブリックの課題に取り組みました。私は学生時代、仏教の死生観にも興味を持っていたので、動物の命と終わりのないリピートを組み合わせて、テキスタイルをデザインしました。 このデザインはいつか商品化したいと考えていて、2019 年にリデザインし、träffa träffa (トレファトレファ) というテキスタイルブランドから発表しました。
ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うところなどを教えてください。
良いところは、工デ内の他の専攻と交流があることだと思います。また、他の専攻の学生の講評を聞けることも勉強になりました。卒業して15年近く経ちましたけど、同級生とは今も仲良くしていて、友人達の活躍からたくさん刺激をもらっています。 改善した方が良いと思うところは、私がコメントするなんておこがましいですけど、こういう考えもあるのだなとご参考までに読んでいただけると嬉しく思います。制作だけにフォーカスするのではなく、社会の課題解決をテーマに取り組んだり、企業などと接点を持ちながら学ぶ機会が増えると、より良いと思います。学生時代から、社会とどう関わりクリエーションを発信していくかは、大事なことだと考えています。
ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
こちらもこのような考えもあるのだなとご参考までに読んでいただけると嬉しく思います。若い時期はあっという間に過ぎてしまうので、本当に大切で尊い時間だと思います。たくさん物を見て、遊んで、疑問を感じたり、様々な経験をしてほしいと思います。また、凝り固まらずに、興味がないものや好きじゃないものにも興味を持ってみたり、好きなものに対しても違う角度から見てほしいです。そして常に社会に目を向けて、意識を持つようにしてほしいです。 世界は広いので思い込まずに見ることで、思ってもみない発見がありますし、探求していくことで自分自身についても知ることが出来ると思います。 そうすることで、自分にしか出来ない表現にも出会えると思います。 そのようにお伝えしたい理由は、どんな仕事も大切ですけど、プロのクリエーターとして生きていくということは、表現するということだけで終わってほしくないからです。