Department of INDUSTRIAL,INTERIOR and CRAFT design武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科

工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS

2011年 金工専攻 度卒業

今井みのり

Imai Minori

鉄作家兼飲食店オーナー

ー 現在のお仕事内容について教えてください。
個人事業主として鉄加工の製造業をしています。制作物はアートから建具まで様々です。卒業後1年間研究室スタッフで大学に残り、その後は 就 職 せ ず に作家活動を続けつつ、平行して店舗サインや什器・家具・建具などのオーダーメイド制作をしています。 依頼仕事で多いのは店舗用のサインや什器で、特に個人店の方からの依頼が多いです。近年は個人宅用の家具や表札等の依頼もあります。 現在はアイアン家具の自主ブランドを立ち上げる準備もしています。 また、2017年に練馬区石神井公園にて夫婦経営でカフェバーをオープンし、そちらのオーナーでもあります。お店の内外装は全てデザインし、 サインや家具もほぼ全て手づくりしました。お店に来たお客さんから鉄仕事の依頼を受ける事もあります。
ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか?
依頼仕事ではクライアントの意向や好みを出来るだけ再現すること、作品制作では自分がその時旬なものを楽しく作ること。 また、量産品とは価格面では絶対に勝負できない分、デザイン性やクオリティーの高さ、ミリ単位でのサイズオーダー、納期の融通など、フリー ランスかつ手仕事だからこそ出来るメリットを大切にしています。 こだわりは“極力溶接痕を残さない・見せない”こと。これはムサビ時代から信条でした。鉄というといわゆる「男前家具」「ガレージ系」というよ うな厳つくて粗いイメージが先行しがちですが、鉄はとても綺麗な素材だと私は思っているので、鉄がちゃんと綺麗に見えるように、仕上げの 精度にはこだわっています。
ー 工デで学んだことは卒業後に活かされていますか?
金工を専攻し、3年次以降は鉄を用いた作品ばかり作っていたので、工デで学んだ事はそのまんま今の仕事に直結しています。現在の工房も 当時の助手さんをはじめ金工OBの方づてに見つけて入る事が出来ました。学生時代はアートワーク中心の制作だったので、家具などを作る 技術は卒業後に独学や同業者に話を聞いたりして身につけましたが 、アートにしろ家具などの実用品にしろ、デザインする上での基本的な考 え方や方向性は工デ時代に養ったものが今も残っていると思います。また、アートもデザインもやるし実用品も作れるというように、ジャンル を問わずマルチに制作できるというのは、工デ出身ならではの強みかなと思っています。
ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うことなど教えてください。
工デの良いところは、なんといっても充実した工房があるところです。広くて綺麗で(私の時代はプレハブでしたが)機材も充実していて最高で す。大学をでればその環境がいかに稀で貴重なものか分かると思います。 また、多くの専攻が1つの科としてまとまっているのも、他美大にはない良さだと思います。1年次は基礎実習で様々な専攻を体験できますし 、2年次に専攻が分かれても他専攻に友人がいるので、情報交換や、ときには異素材とのコラボなんてことも可能です。 私が学生時代に改善して欲しいなと思った点は、専攻に分かれるタイミングをもう少し早くして欲しかったです。金工がやりたくて入学したので、 専攻に分かれるまでの1年半は中々に長く、早く金工を学びたくてウズウズしていました。せめて2年次の頭から専攻に分かれるカリキュラム であれば、自分の専攻した分野でより多くの事を学べる機会が出来ると思います。
ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
工デは教員免許もとれるし、デザインも学べるし、素材にも触れられるので、ものづくりはしたいけど将来のビジョンはまだ不透明であったり、 在校生はとにかく大学に来て、この夢の様な環境を存分に利用し尽くすと良いと思います。工房以外にも、図書館や美術館、共パソ室、映像室 など、ムサビ構内は本当に宝の山です。高い学費の元を取るくらいのつもりで、貴重なムサビ生活を謳歌して下さい。 それと、功績のある教授や先生方からのデザインチェックや講評は設備以上に本当に貴重な経験だと思います。否定されることを恐れず積極 的に自分のアイディアをプレゼンしていくと良いと思います。(社会に出る前に否定されることに耐性をつけておくのも超大事です)