Department of INDUSTRIAL,INTERIOR and CRAFT design武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科

工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS

2010年 金工専攻 度卒業・2012年 金工専攻 度大学院修了

坪島悠貴

Tsuboshima Yuki

金属造形作家・3Dモデラー

ー 現在のお仕事について教えてください。
現在、金属造形作家として一応独立し、「可変金物」と名付けた変形する作品を銀などの金属を使い制作・販売し、収入を得ています。 "変形する"というのはつまりAの形からBの形へとトランスフォームするということで、3DCADを使って設計、3Dプリントした原型を金属に置き換え制作します。 作品は主にGallery花影抄という根付を扱うギャラリーを通して販売していて、そのご縁で根付形態から生き物の姿に変形する作品を多く作っています。 作家として活動する一方で、フィギュアなどの原型となる3Dモデルを設計するお仕事をメーカーから頂いています。 作品同様、変形や何かしらのギミックを持った商品を請け負うことが多く、作家活動と共にやりがいのあるお仕事です。
ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか?
変形をはじめギミックのある作品を作る際に特にこだわっている事なのですが、作品を構成する形一つ一つが根拠を有するものになるよう心がけています。 変形から簡単な可動まで、機能を持ったものを作る場合には様々な制約があり、造形的な美しさよりも機能を優先しなくてはならない場面が少なくありません。 一方、ギミックそれ自体が作品のテーマとしてあるので、多少不格好だったとしても機能上の都合として割り切ってしまうことも可能です。 そういった中で、せめてその形があらゆる選択肢の中から導き出された最適解なのだと、作者として確信を持てる必要があると私は思っています。 そのため、関節の位置一つにしても色々な可能性を検証し、それが最適な位置、形状であることを確かめながら設計します。 そうやって形の根拠を示していくことの積み重ねが、ひいては機能を持ちなおかつ美しい作品を生み出すのだと信じているからです。
ー 工デで学んだことは卒業後に活かされていますか?
私は学生時代、課題内容にとらわれてしまうことがよくありました。 例えばジュエリーを作るという課題の場合、ジュエリーらしさに固執してしまい、本当に作りたいものが作れません。 それに対し金工の先生方に教わったのは、自分のやりたいことを課題のテーマにうまく繋げるということでした。 乱暴な例えですが、ジュエリーという課題だけどフィギュアが作りたいなら、身に着けられるフィギュアを作ればいいのです。大切なのはそれを作る意義を説明できることだとも。 これは私が可変金物を作るきっかけに繋がります。 Gallery花影抄から最初に誘っていただいた展示が、根付をテーマとしたものでした。 それまで置物作品メインだった私が身に着けても壊れない作品を模索した結果が、壊れやすいパーツを体内に収納して根付形態に変形する作品だったのです。 根付という課題に対し自分の作風を繋げるという、金工での教えが大いに活かされた出来事でした。
ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うことなど教えてください。
学部1~2年の間に工デの中の各専攻を体験して色々な素材に触れられたのはいい経験だったと、今改めて実感しています。 作品を作るうえで違う素材を使いたいとき、それを一度触り、加工法を学んだ経験があれば、出来ること出来ないことの想像がつきやすいですし、製法を調べる上での足掛かりになります。そして多くの素材を触った経験があればあるほど、創作の選択肢の幅を広げることが出来るからです。 これから工デに進む
ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
もしやりたいことがわからず作るものを迷っているなら、一度子供のころ好きだったもの、夢中になっていたものを思い出してみてください。案外、それが突破口を開く助けになるかもしれません。 そしてやりたいことが見つかったら、思い切り打ち込んでみてください。 私も学生時代、趣味全開で好き勝手な作品ばかり作っていましたが、先生方はそれを認め、応援してくださいました。 ムサビ工デはそういった懐の深い場所だと思います。 何か一つでも好きなことがあれば、人生何とかなるはずです。それを見つけやり通せるよう頑張ってください。