工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS
2003年 陶磁専攻 度卒業
竹林一茂
Takebayashi Kazushige
SHA inc. 代表取締役 / アートディレクター
- ー 現在のお仕事内容について教えてください。
- 東京・中目黒を拠点としてグラフィックデザインを中心に、ブランディング、広告、パッケージ、ブックデザイン等、 強いインパクトを残すアウトプットを軸とした幅広いコミュニケーションクリエイティブで活動しています。 ONESHOW、NYADC、CANNESLIONS、D&ADで数々の賞を受賞し、特に海外で大きな評価をいただいています。 2020年 NY ADC AWARDSにてデザインスタジオカテゴリーで世界1位に表彰される BOUTIQUE DESIGN STUDIO OF THE YEARを受賞しました。 HP → www.shainc.co.jp INSTAGRAM → @shainc_tokyo
- ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか。
- デザイナーとしてプロの立場だと当たり前の話なのですが、定着力や絵の説得力は大事にしています。 ツールの進歩に伴って基礎を学ぶ機会が少なくなり、技術的に不足している人が多いように感じます。 毎回企画や目的は違えど、デザイン成果物に対して、ハッとする、美しい、かっこいい、気持ちいい、心に刺さる、等の シンプルな言葉に形容され届くことはいつの時代においても大事なことです。 ※論理的思考を求められる頭でっかちの現社会において忘れがちな事項ですが。。 感情を揺さぶるものを常に作り続けるためには、やはりデザイナーの力量で印象を決定づけます。 例えば、Youtubeやインスタのようなタイムリーに発信していく分野であればデザインの精度はそこまで 必要ではないですが、私の主戦場としているブランディングやグラフィック等の何年も残っていく仕事は 今も昔も耐久性のあるデザインが前提として求められると思います。
- ー 工デで学んだことは卒業後にどのように活かされていますか。
- 実際に手で土という素材を探りながら物を3次元的に見る土台を培ったことで デジタルの乾いた表現の中にも空間の奥行きや質感をうまく取り入れられていると思います。 また、物のフォルム(それがタイポグラフィーやフォトグラフィーに置き換わっても)シビアに見れる判断力がつきました。 卒業制作は社会に出てグラフィック分野に進みたいという意思もあったので ポートフォリオも見据えて、グラフィックに特化した鋳込み表現に絞りました。 そういった経験もあり、近年制作した「Uncontrolled Types」では工芸出身でないと生み出せない質感を持ったタイポ表現だったり 「BioClubブランドビジュアル」の仕事ではプログラミングによるシミュレーションとグラフィックを掛け合わせた 新しい試みだったのですが、目指す最終質感は釉薬の曜変天目だったり (笑) 社会に出た分野は違ったとしても陶磁で学んだ体験はとても生きています。
- ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うところなどを教えてください。
- 良い所 素材と自分自身とで向き合える時間が多い所。 純粋に作品に向き合う時間は社会人になると少なくなりますから貴重な経験だと思います。 また、教授・助手・教務補助・学生の間が近く、アットホームに接せることができることも 利点だと感じています。(今はコロナで大変な時期だとは思いますが。。) 改善した方が良い所 特にクラフト系はプレゼンテーションが下手なので (笑) 人と会話することを始め、コンセプトの絞り方や、他人とどう言った形で強みを差別化していくのかなど たくさんの先輩の失敗と成功談を含めて事例を学べる機会があれば良いと思います。 在学時代、卒業から社会で働くまでのつながりやプロセスを具体的にもう少し知りたかったという思いはあります。
- ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
- デジタル社会に突入し、素材と自分自身とが向き合える時間は本当に貴重なものになっています。 私のように就職先が仮にデジタル領域に近い業種に入ったとしても、工デで培った強みが発揮できると思います。 受験期・在学中は周りと比較して自己否定をしがちですが まずは自分の良さを自分自身で褒めつつ認識してください。良さが理解できなかったら友達や先生にしつこく聞いてください。 自分の立ち位置を明確にした上で不足している技術や思考を補う。 そうすることで自分自身の能力も発揮しやすくなりますし、コミュニケーションも円滑になります。 在学中は、授業・趣味、好きなことをとことん追求してオタクになることを強くお薦めします。 (笑) 卒業生として後輩をずっと応援しています!