Department of INDUSTRIAL,INTERIOR and CRAFT design武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科

工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS

1995年 陶磁専攻 度卒業

萩原千春

Hagihara Chiharu

陶磁器作家

ー 現在のお仕事内容について教えてください。
個人作家として陶磁器の制作と展示を中心に仕事をしています。ポットや急須などの注ぐ器と日常の食器を主に制作しています。その他にも陶磁器に関わるいろいろな仕事をしています。スパイラルマーケットや倉敷意匠計画室などのショップやメーカーとのコラボレーションによるオリジナルテーブルウェアのデザインと制作。ホテルやレストラン、カフェのテーブルウェアのデザインと制作。そして大学や専門学校で講師もしています。
ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか。
「質感と素材感」を大切にすることです。たとえば、ショップから「白いオリジナルの器をつくりたい」というリクエストがあったとします。ショップのコンセプト、器の用途、土と釉薬の組み合わせなどを検討しながら器をイメージしていきます。この時に大切にするのが、どのような白にするかです。魅力のある器にするためには、白の質感や素材感が重要だと考えていますので、イメージを具体的にするために、たくさんの釉薬を調合します。そして焼き上げたテストピースから、イメージにあう白を探します。よいものがなければ、さらに焼成テストを重ねてイメージに近づけていきます。スパイラルマーケットで販売されている「アイシングシリーズ」もそのようなプロセスから生まれました。土と釉薬のテストを繰り返して、少しくぐもった柔らかさのある、焼き菓子のアイシングのような白にしました。スパイラルマーケットにぴったりの白になったと思っています。
ー 工デで学んだことは卒業後にどのように活かされていますか。
工デで学んだのは「作りながら考えること」ですね。新しい課題に取り組む時に、まずは作るアイテムについて調べたり、スケッチをしたりするのですが、それだけでは説得力のある形にはなりません。実際に作り始めると様々なことがわかってきますし、時には問題が出て、やり直しが必要になる場合もあります。でも、さらに作りながら考えていくと、やりたかった事がクリアに見えてきて、形として立ち上がってくる。そんな経験が学生時代に何度もありました。今、専門以外の素材に取り組むときや新しいアイテムの制作依頼が来たときに、何とかできると思えるのは、学生時代に身についた「作りながら考える」のおかげですね。土瓶の持ち手も真鍮で自ら作っています。専門ではない金属部分を楽しみながら作っているのは、学生時代の影響が大きいですね。
ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うところなどを教えてください。
工デは14号館をメインにして7コースが身近な距離で制作をしているので、自分の専攻以外のコースの課題や制作が目に入ってきて、自然に学べるところが良いですね。合同での講評会や卒業制作展もあり、他の専攻の作品からの刺激もたくさんあります。各工房の制作のための設備は充実していて、私が学生だった頃と比べると羨ましいくらいです。改善した方が良いこととは少し違うかもしれませんが、先生方のお仕事をもっと在学中に知りたかったですね。学生時代は制作に夢中で気付くことが出来ませんでしたが、先生方は社会で活躍している方ばかり。卒業後に先生方のお仕事を目にするたびに、在学中にお話を詳しく聞いておけばよかったと思っています。
ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
ムサビの工デはデザインを考えて、自分の手で制作をしながら学べる学科です。立体のデザインは、形を考えるだけならばパソコンの画面上でも出来ますが、自分のアイデアを本物の素材で制作できる環境は、どこの学科にでもあるわけではありません。そして、工房での制作には思いもよらない発見がたくさんあります。学生時代に制作をしながら五感を通じて感じたことや、失敗しながら考えたことは、あなただけの大切な経験になります。自分の造形力を成長させてくれますし、将来を変えていくこともあるかもしれません。ぜひ、工デで思いっきり制作に取り組んでみてください。