Department of INDUSTRIAL,INTERIOR and CRAFT design武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科

工デのその後INTERVIEWS & COLUMNS

2015年 木工専攻 度卒業

川内隼人

Hayato Kawauchi

Hayato Kawauchi Design Studio

1988年 北海道 小樽に生まれ、卒業と同時にイタリアへ渡り、プロダクトデザイン事務所(ミラノ)にて経験を積む。 2016年頃からHayato Kawauchi Design Studioとして活動を始める。 現在はオフィスチェアー、医療機器、コンテナのモジュールシステムなどの様々なプロダクトデザインを手掛けている。

ー 現在のお仕事内容について教えてください。
現在は家具デザインとプロダクトデザインのプロジェクトが進行中です。 家具デザインはオフィスユースからコントラクト、ホームユースなどの各メーカーの分野に合わせて、 デザインを行っております。 使用シーンによって仕様マテリアルは様々で、各素材の特性、加工性などを考慮し、形にしていきます。 プロダクトデザインは医療用機器のデザインを行っております。 内部機器の配置、安全性などの様々な制約をしっかり考慮し、デザインを行います。 それぞれのプロジェクトの期間は3年以上かかる物もあれば、1年でできる物もあり様々です。 クライアントが求めている事を汲み取り,アイディアを形にしていきます。
ー お仕事のこだわりやポリシーなどはありますか。
まず、プロジェクトが決まったら、デザインを行う前に徹底的にリサーチを行います。 市場製品の把握をするとともに、現市場に不足しているものが何であるのかを考え、方向性を決定します。 その後、具体的にアイディアを考え、様々な方面からアプローチしてデザインを行います。 使用用途や環境、快適性、安全性などのユーザーの立場からや、マテリアルの特性、加工方法、コストなどのメーカーの立 場とそれぞれの立場を配慮してデザインを行います。 勿論、コストなど条件があるので、すべてが思い通りにいかない事が多々ありますが、その中での最善は何なのかをよく考 え着地点を模索します。 プロポーションや快適性をとても大切にしているので、一つのプロジェクトに大量のモデルを3Dプリンターなどで製作し て確認を行い、最後の最後まで妥協しないで、その時の最善を尽くす事を心がけています。
ー 工デで学んだことは卒業後にどのように活かされていますか。
工デはデザインから制作まで、自分ひとりで行わなければなりません。その為、一番の強みはデザイン、設計、制作 のすべての工程を行える事だと思います。 多くの美術大学のデザイン科はデザインを基本的に勉強しますが、自身で製作し製作方法をしっかり勉強できる大学は多く ありません。 デザインする上で構造面と制作面は必ず配慮しなければならない点です。クライアントワークをする際に、製作方法をしっ かり理解していることから制作頂ける方々とスムーズなコミュニケーションをとる事が可能です。 提出する図面一つを例に挙げても、単純な外形寸法を記載した図面よりも、制作で必要な寸法を記載してあげる方が職人さ んに丁寧でかつ分かりやすい図面です。この制作に必要な寸法は加工方法を知っているからこそ記載できる寸法です。 また、家具をデザインする際には、強度面の配慮は欠かせないもので、様々な加工方法を知っていると強度面のみならずコ スト面も配慮しつつ、その条件にあった多方面からのアプローチが可能です。 以上のように、工デで学んだ事は現在にも十分に活かされています。
ー 卒業生として、工デの良いところ、改善した方が良いと思うところなどを教えてくだ さい。
工デの良いところは、デザインから工芸まで選択できる幅が広いので、各課題で生徒が自分の方向性に合わせて課題 をこなす事が可能です。 また、設備環境は日本の美術大学ではトップクラスに整っています。十分すぎるといっても過言ではない程の設備で自分の デザインしたのものを製作可能です。 改善点ですが、在学時は工デの各コースが距離感が近いようで遠いと感じました。 せっかく各コースが近くにあるので、グループワークなどで各コースと交流がある課題もあってもよいのではないでしょう か。 専攻外のコースのマテリアルや技術の知識が増えて、デザインの幅が広がると思います。
ー これから工デを目指す高校生、在校生にメッセージをいただけますか。
これから工デに入られる方は、入試課題のデッサンなどでとても苦労されていると思います。 その苦労は、どんな形であれ入学後に必ず報われる時がくると思いますので、がむしゃらに頑張って下さい。 浪人生の方は、たまに息抜きする事も良いと思うので、あまり思い詰めずに頑張って下さい。 在校生の方は、今いる環境が社会に出てどれほど恵まれていたか実感する時が来ると思います。 4年間と与えられた時間をいかに有効活用するかで、将来に大きく左右すると思います。 友達と飲みに行くのもいいですが、一つの事にこれだけ時間をかけて取り組める機会は少ないので、 人一倍努力して課題をこなす事をおすすめします。 学生に与えられた特権の ” 時間 ” を有効活用して、学生生活を楽しんでください。 大学で養った技術、知識は今後の自分の財産になると思います。頑張って下さい!